俺は仕事がもしかして速いのではないか?
なんていう、中堅に入った社員には、良くありがちな、実に傍迷惑な妄想を最近している。
多分、コレを見た人で、私をある程度知る人なら、みんなこう言うだろう。
おいおい君、そりゃあ無いだろ。あれだけ仕事にミスが多いと指摘されてるのに。こないだだって遂に他の部署から『お前はマジで工番の書き間違いを辞めろ!』とメチャクチャ怒られたじゃないか。一体そんな君がどうしてそんな訳のわからない得意調子に浸っているんだ。
まあまあ、そんなに怒らないでくれよ。妄想くらい人間だものするさ。それに、俺にはこう言うだけの根拠が、ほんのちょびっとあるんだ。
根拠、
それは、僕自身の発達障害だか、双極性障害だか、もしくは、そのハイブリッドから成る、『過集中』という現象にあった。
要するに、僕と同じ構造の脳の人は、何らかのことに過度に集中して取り組み、寝食や身体の不調なんかを忘れて、メチャクチャに気が済むまで、一つのことに対して取り組んでしまう。
去年から、なんだか仕事が多かった気がする。
細々した案件に、偶に中規模〜デカい工事の案件が来ること、なんと90件。ひたすら僕は手を動かし、やっとこさ慣れてきた(前述したようにミスは多くよく怒られるんだが)設計士の仕事に邁進していた、と自分では思いたい。
マネージャーにも、あなたはミスが多くて3年目にしてはちょっと…なんて言われながらも、年末のドチャクソ忙しいときに、『いやあ、前はこう言う細かい仕事は私がやってたんだけど、今はあなたに全部任せてる』と確かに言われた。帰りがけに、『来年も助けて』なんで言われたのは、嬉しかったけど、来年また激務かあと思って、少したじろいだよな。
そして
それと全く並行して、俺はプログラマとしての仕事を、ちっちゃく、少しだけしていた。
記事に残るから、あんまり詳しくは書けないんだけど、それはテスト段階まで来て、良く動いていたように、いや、良くできすぎているように、見えたんだ。
結論から言えば、それは先輩から、(理由は後述するんだけど)強いstopがかかって、プロジェクトとして影響に凍結された。
先輩とは、喧嘩になってしまったし、正確に言えば、喧嘩になったから凍結しちゃったんだけど、
でも、後からよく考えて、家族から、『プログラミングをしてる時、トイレ以外席から立ち上がらずに11時間くらい作業をしているから、心配になった』と言われたり、
のちに、あの時、先輩が、急に狂ったように見えたけれど、
ともすると、先輩は本当に狂ったのではないか??あの一瞬だけ。
そんな、なんだか、心霊現象なのか、はたまたタチの悪いホラーなのか、
分からないような時間が、俺の20代後半を、のったりと包み込んでいた。
※※※
最近、歩くのを辞められない
どんなにゲームがしたくても、アニメが観たくても、それを身体が全く受け付けない。ゲームをすれば、アニメを見れば、立ち所に具合が悪くなり、寝込んでしまう。
なんでなのか、分からない。
たまたま通うことになった、スポーツマッサージの担当の先生に、言われた。
『歩くのは確かに良いことですが…あなたのように"考えるために"という理由で、日差しが強い中4時間ほど週末は歩く、というのは、歩いた後でストレッチを入念にして頂かないと…その…』
脛を押してもらうと、正に痺れるような痛みが走って、メチャクチャだった。
他にも、俺の身体は全身が凝り固まっていた。例えば左腕。何故右利きなのに左手がここまで固まるのか理解できないと先生に言われた。
僕は最初、『ああ〜…中学の頃野球部だったので…バットは左手を軸に振るので、そのせいかもしれませんね…』みたいな、よくわからない受け答えをしていた。
しかし、遂に先週の金曜日、俺はその原因に気がつくことになる。
俺は、仕事中、右手でマウスを操作して製品情報をスクロールしながら、左手で猛スピードでメールや見積もりを打っていたのだった。
思考した通りに、思考した早さと同じくらいの勢いで書くメールは、なんだか、ラットに大麻を注射した時の、カラカラの周り心地のようだった。
因みに、余談だけど、今1800文字目にして、俺は文章の打ち間違いはあっても、構成を差し戻すことが全く無い。思いつくままにこれを書いて、今右手親指が猛スピードで動いているのにようやく自分で理解をしているところだ。
俺は、はたと思う。
あれ、
俺は『狂ったように動いてる』のか?
そして、『そのスピードに自分で気づけない』のか?
と。
※※※
俺は、歩いている途中に考える。
人間とは何か、生きるとは何か、なぜ人間は人間であり、欲得というものに従い生き、しかしよく特に逆らうと何故逆に利得となるのか、そんなことをずっと。
俺はヘタをするとこんなことを仕事中にも考えているんだ。
なぜか、考えることが、止められない。
人の表情と、言葉を口にした際のその言葉の裏側、彼ら彼女らが、何を苦しみ、どう感じたのか、飽きるまで永遠に考えていた。そしてまだ、飽きはやってこない。ともすると永遠にやってこないのか、これは。
誰かが、俺の、ファッション・ジョークで首に下げている、緑色に乱反射するゴーグルを付けて、こう言った
『要するにさあ、君が観てるのは、こういう、"危うい世界"なんだね…それを君の魅力だという人も居るから、イタズラには止められないんだけど…』
ああ
なるほどな、なるほど。
※※※
なんだか、気持ちが悪いくらい、給料が、ちょっとだけ、微妙に良い(完全に良いとは言えない。ここだけはリアルだな)
同期の中で、或いは会社の中で、俺だけが残業をしていない。『病気だから、量の分担が少ないんですよね?』マネージャーに聞いたら、『ええ、やり易そうなパターンを考えて渡しています(量については言及しない)』だって。
何かが、変な気がする。
俺だけ、なんか、仕事をしていて、楽しそうな気が、
社会人になり、徐々に、死んでいく、友達の顔が、
克明に、おれの心を、捉え、揺さぶる
※※※
マルクスという偉い人が言うには、『産業革命による機械の登場により、仕事とは、つまらない、最低なものに成り下がった』
ひょっとして
あなたは、コレを言っていたのか
俺は、
僕は、脳に、治療で磁気なんかを浴びているから、
だから、機械とハイブリッドである俺は、
一人だけ、『機械労働』が、得意なのか???
※※※
人間とは何か。
人々が苦しみ喘ぐ社会を、俺が苦しみ喘いでいた社会と、微妙にズレたその両者が結ぶ姿勢角に、段々と、俺も、理解が及び、しかし、それをどうすることもできないのではないかと、何かが叫び俺に言うのだった。
電車の中で、介護士の方が、介護に疲れて、被介護者を間接的に殺害してしまったニュースが報道されていた。
その人の貰いは、信じられない程だった。普通、こうした、禁制帯の中に居る人の給与というのは、歴史的に観たら弾まないといけない筈だと、俺は直感的に思った。
だがしかし、そうではない。介護を必要としていた人は国に沢山居たし、それが問題とすらなっていた。なっていたならどうにかしろと、しかし、現実が、俺を機械として扱うように、俺が彼らに今今何かを施せるほど裕福ではないように、そして、禁制帯というベールすら剥ぎ取り、機械と資本主義の登場が、その仕事を逼迫させたように。
俺は、何もわからなくなり、友人達に目を遣るが、彼らは、日々の仕事に疲れていたか、そうでなければ、この社会で自分が自分であることを否定され、逼迫したのちに、何らかの簒奪者となって、他人に危害を向けようとすらしていた。
俺は、いよいよ現実が恐ろしくなる。
だが、俺は、考えなくてはならないような、気がする。
何を、なのか、俺のようなちっぽけな、機械の男に、何が出来るのか、わからないが。
俺が歩き続けるのは、そうした、友人達から感じる苦悶からの逃避か、或いは、いつに繋がるか分からない未来への布石か、
俺は、分からないまま、明日にはともすると、すぐさま倒れて、仕事も失うか、分からない身で
何も分からず、ただ、人間とは何か、考え続けて、いる。